名付け親

BDで「ゴッドファーザー」を見る。コッポラによるリマスター版?
だというのに、意外に画質は良くなくて、DVD並み。
もともとこんなもんだっけ?と、ちょっとガッカリ。
面白かったのは、コッポラ自身によるオーディオコメンタリーだ。
自分がパラマウントの上層部に信用されなくてクビにされそうになり、
裏切ったスタッフを機先を制してクビにしたとか――なんて
あたりは、まさにマフィア並みの権謀術数である。
第二班が撮影したラスベガスのシーンには、ホテルの入り口に
ヒッピースタイルの若者が映っており、
恥ずかしかったとか(映画の舞台は第二次大戦後)。
終盤のマーロン・ブランドアル・パチーノが語らう
印象的なシーンは、全ての撮影が終わったあとに、この二人の
語るシーンが必要だという意見が出て、付け加えられたとか。
ここだけ友人の脚本家、ロバート・タウンに頼んで書いて
もらったというが、これが欠けた「ゴッドファーザー」は、
かなり物足りない出来だろうと思う。
マーロン・ブランドが家庭菜園で死ぬシーンは、プロデューサーから
カットしろと言われた、というのも今から思うと信じられない。
あれがない「ゴッドファーザー」も想像できない。
編集はコッポラが手掛けたが、製作側から言われていたように、
フィルムを切りまくって2時間15分に編集し、見せたら
「いいところが全部なくなっている」と言われて、元通りにしたのが
公開バージョンだったとか。想像するに、「仁義なき戦い」のような、
アクションばかりのかなり殺伐なバージョンになっていただろうなあ。
そして、なんといっても一番ビックリしたのは、あの馬の首が、
本物だったという話。なんでも、ペット用の肉として使う馬の首を、
業者から送ってもらったとか。


などなど、意外なエピソードが満載で見応え(聴き応え?)があった。
この人、巨匠と言われているが、意外と小心で迷いが多く、
プロデューサーにコントロールされているなあ、という印象である。
地獄の黙示録」の後半の混乱ぶりが、いまにして頷ける。
晩年の黒澤もそうだが、こういうタイプの人は、なんでも自分で
やってしまうと、制御が利かないということなのだろう。