2連チャン

大学時代からの友人、S氏が亡くなった。
あまりに早すぎる他界で、言葉もない。
思い出は尽きないが、映画や本について、彼とビールを
飲みながら語り合うのは、この上ない楽しみだった。
それが叶わなくなったいま、ただただ茫然としている。


このやりきれなさを紛らわそうと、映画を見に行った。
J・エドガー」と「ドラゴン・タトゥーの女」を
立て続けに見た。
J・エドガー」は前評判がイマイチだったので、あまり
期待していなかったのだが、なんのなんの、最後まで
まったく飽きさせない出来栄えだった。
アメリカの政治史、犯罪史を駆け足で走り抜けつつ、
FBIの初代長官として長期間君臨したフーバーという男が、
いかにのし上がり、権力を維持したかが描かれる。
同性愛やら異性装やらマザコンやら特異な性癖を
持っていたという多面性は、権力志向と関連づけると
興味深いテーマなのだろうが、むしろ全体としては、
ちょっとコンプレックスを持った男が、一生懸命に
頑張った話であり、純愛をつらぬいた話とも思えるのだ。
いい年をしたエドガーが、女性とデートができないからと、
母親にダンスを習うシーンはちょっとおかしくて哀しく、
ジンとくる。
それにしても、出ずっぱりで熱演したのに、アカデミーなど
各映画賞の演技賞部門でノミネートすらされてない
ディカプリオ君が、ちょっと気の毒になった。


ドラゴン・タトゥーの女」は、期待にたがわぬ面白さで、
2時間37分があっという間だ。ま、言うなれば
スウェーデン版・犬神家の一族ですな(^^;)。
しかし謎解きなんかより、タイトルロールのパンクな
ダークヒロインが凄いキャラで、強烈な印象を残す。
他人とのコミュニケーションが出来ない精神的欠陥を
持ちながら、驚異的な記憶力を持つ天才的ハッカーという、
久々に見る魅力的なヒロインである。わたし的には、
ぜひレクター博士と対決してもらいたいと思った(^^;)。


それにしても、2本見てどっちも面白かった、満足した――と
いうのは珍しい。そこでふと思った。これは、亡きS氏の
おかげではないか。彼が見えない力で、私をこの映画に
導いてくれたのではないかと。
そう思うと、なんだか少しほのぼのして、気が休まった。


S君、頼むよ。これからも面白い映画を、
私に引き合わせてくれよ。そしてまたいつか、一緒に
面白い映画について語り合おうや。いつものように
うまいビールを飲みながら、ダジャレを飛ばしながら、ね。