船長続き

「逆説の世界史」(井沢元彦)を読んでいたら、アップツー
デートな話が出てきて、思わず笑ってしまった。
中韓の思想的バックボーンである朱子学についての論及が
メインの内容だが、その中で目を惹かれたのは次の話。


幕末の1863年10月21日付のイギリスの新聞・タイムズが、
日本人と中国人(清国人)を比較した記事を載せている。
「ヨーロッパの軍艦との先の戦い(薩英戦争、下関戦争)でも
示されたように、日本人の軍備の品質や機械に関する天才的才能を
敬わずにはいられない。(中略)中国人であれば自分たちの街が
炎上するより遥か前に逃げ出していただろう」というのだ。
そして井沢は言う。
「中国人はなぜ真っ先に逃げるのか。それは
勇気がないからではなく、『国を守るのは官(氏)の仕事だろう。
俺は商人だから関係ない。第一、あいつらはいつも俺たちを賤業の
徒と罵って馬鹿にしてるじゃねえか』と考えるからだ。
つまり、朱子学が理由なのである。士農工商という商業蔑視の
身分制度がある以上、そしてそれが社会道徳として確立されて
いる以上、彼の言い分は朱子学的にまったく正しい。しかし
お気づきのように、『公』という意識は、ここにはまったく
存在していない」(勝手に要約シマシタ)。


韓国の旅客船沈没事故に、ぴったり符合する話である。
船長が真っ先に逃げたり、過積載が常態であったり、それを
監督官庁が見逃したりと、あの事故にまつわる驚くべき事態の
数々も、これで頷けるではないか。身内の便宜を図って、
歴代の大統領が汚職で逮捕されたり自殺したりするのも同じだ。


中韓に関する本を読み、ウォッチングしていると、この朱子学
民族を骨絡みで呪縛していることに気づく。近代民主主義思想とは
まったく相容れないゆえに、事故のような矛盾が社会のいたる
ところに噴出するわけだ。
これが解けないかぎり、韓国の近代化も日本との相互理解も、
たぶんムリだろう。
ま、そういう趣旨の(朱子学だけに)、面白い本でありました(^_^;)。