魔法使い?

亡くなった原節子の追悼放映で、「秋日和」(NHK-BS)を見る。
いまさらながら、「晩春」と対を成している作品だと思い当たった。
というか、「晩春」は、やもめ暮らしの父親が早く一人娘を
片付かせようとする話だが、「秋日和」はそれを母親に
置き変えただけなのだ(^_^;)。


しかし、作品のタッチや息遣いはかなり異なる。その象徴とも
いえるのが、対照的なラストシーンだ。
「晩春」では、娘を送り出した笠智衆がリンゴをむきながら、
肩を落とす後ろ姿で終わる。
秋日和」では原節子が観客側を向きながら、ふっと
思い出すように微笑んで終わる。


父親は喪失感で魂が抜けたようになるが、母親は明日から
自分なりに楽しく生きていこう、と決意したように思える。
この先のひとり暮らしの老後に向かう、男と女の違いを
象徴しているようで、なんとも示唆的だ。


この父親の哀しみが胸に迫るだけに、「晩春」は名作としての
評価が高い。対するに「秋日和」は、明るいコメディ風の
味付けが楽しい映画だ。
それにしても、全然たいした話でもないのに、面白く見せてしまう
マジック……小津はすごい。これもまた映画なんだな〜。
あ、そういえば“小津の魔法使い”なんてダジャレを言ってた人も
いたな。白井佳夫だけどw