読んでから見る

「ルーム」(エマ・ドナヒュー著)を読む。2010年刊のミステリー。


(概要)
五歳になったジャックはママと「部屋」に住んでいる。いつも必ず、
ママが一緒だ。ジャックにとって、この部屋だけが「世界のほんと」
だった――。七年前に誘拐され、監禁された少女は、
監禁されたまま子を産んだ。母は必死に子を育てる。
人の尊厳と愛のために。極限状況を生き抜こうとする人間の
勇気と気高さを描く物語(アマゾンより)。


……という衝撃的な設定。5歳の子どもの視点から描いているのが
巧みで、言葉の言い間違いや外の世界を知らないゆえの齟齬など、
子どもらしいリアリティのなかに、じわじわと恐怖が迫ってくる。
前半は非常に怖い。
母親との濃密な接し方や細かい日常のディテールは、子育てした
女性でないと書けないものだろう。これほど引きこまれた小説も、
近頃珍しい。


なぜこの小説を知ったかというと、CSのゴールデングローブ賞
授賞式で、この映画化作品が主演女優賞を獲ったゆえ。
アカデミー賞でも各部門にノミネートされている。
日本でもほどなく公開されるようだが、これは一足先に原作に
あたっておかなくては……と思ったしだい。


非常に映画的な作品だし、セリフも練られていて、ほとんど
このままシナリオにできそうだ。ちなみにシナリオも原作者が
書いているので、内容にたいした変更はないだろう。
したがって、読んでいると、まだ見てないはずの映画の画面が
リアルに浮かんできて、もう見たような気になってしまった(^_^;)。
おそらく、映画を見ても大きな驚きはないだろう。
これは、原作を読んでトクしたのか損したのか……? 
でも、小説との細かな違いを確かめるのも映画の醍醐味のうち。
4月の公開が楽しみであります。