イヤミな男

芥川賞の偏差値」(小谷野敦著)を読む。
歴代の芥川賞全作品をレビューしているが、なにしろ小谷野は博識と薀蓄で
ネチネチとイヤミを言うのが売りなので、褒めているものはほとんどない。だから、読書ガイドとしては全然役に立たない(笑)。
とくに2014年下半期の「九年前の祈り」(小野正嗣)についてのレビューが面白い。このとき、小谷野の作品も候補に上がっていたという。


(以下引用)
この前の二回で、存外今の選考委員はまともなのかなと思 っていたらしょい投げを食 ったのがこの 回で、恨み骨髄である。
私が三度目の候補にな ったのだが、どうやら最初に落とされたという。それで受賞したのが小野の この優等生的で文学的な作だから不快きわまる。
小野は東大駒場言語情報科学出身のフランス文学者だから、沼野充義とか東大の学者が褒めていて、 蓮賓先生まで褒辞を寄せていたから嫌いになったし、阿部公彦などは 『文學界』の 「新人小説月評」 では私の 「ヌエのいた家」を小野より上位に置いていたのに、このあと書いた書評では小野を絶賛し て私のほうはあらずもがなの厭味まで書いていた。みんな死ね。
あとで中森明夫さんが 「作家 ってのは性格が悪いんだから、とれるわけがない」と言 っていたが、 まあそうなんだろう。小野は受賞作としては売れず、その後出したのも売れていないようだ。ざまあ 見ろ 。(引用ここまで)


……とまあ、ここまで正直に私怨をぶつけるのは、いっそ爽やかと言うべきであり、好感を持ってしまった(笑)。
まあ、友達にはしたくないけど。
荻野アンナのダジャレを、「死ぬほどつまらない」と言い切るなど(大いに同意w)、作家も審査員も敵に回すこの度胸はなかなかのものだ。
きっともう、本人は芥川賞を諦めたのだろう、と推測する(^_^;)


それにしても、たしかに芥川賞ってあまり面白いと思った記憶がないなあ……?
調べてみると、小谷野はこのネチネチ路線で、言語、歴史、文化など
いろんな分野で悪口を言いまくっているようだ。
これはもう、ひとつの芸風というべきだろう。
芥川賞はムリでも、こんな鉱脈を見つけたわけだから、立派なもんじゃん!
これから彼の著作をフォローしてみよう……というわけで、また
本を読む楽しみが増えたのでありました。