どっちも良かった!

「魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣」(石井妙子著)を読む。

伝説のフォトジャーナリスト最後の3年間。20歳の時、51歳のフォトジャーナリスト、ユージン・スミスと出会ったアイリーン・美緒子・スプレイグ。二人は、チッソの工場排水が引き起こす未曾有の公害に苦しむ水俣を目指した――。取材開始から十年。近代化の傷と、再生を勝ち取った魂の闘いに迫る大河ノンフィクション。 (Amazonより)

 

映画「MINAMATA」の、いわば解説本として最高だろう。

水俣病の経緯と被害者の闘い、そして3年間にわたってこれを撮影したユージン・スミスと妻アイリーンの闘いの軌跡がよく分かる。

とりわけ、映画のなかでもクライマックスだった「入浴する智子と母」を撮影する場面は、息を呑むほどに素晴らしい。

スミスの息遣い、アイリーンの細やかなアシスタントぶりが伝わってきて、まさに崇高な芸術作品の創作現場に立ち会っているような臨場感を覚えた。

 

スミスの人間的魅力も、じつによく伝わってくる。

出版社にとってはトラブルメーカーであったとか、酒びたりで家庭を顧みないとか、欠点は山のようにある。しかしふだんのスミスは冗談ばかり言ってすぐ人と打ち解ける、魅力的な男だったとか。

いわゆる「人たらし」というヤツね。カメラマンには大いに必要な才能だ(^_^;)。 まあ近くにいたら迷惑だが、傍で見ている分には魅力的な人物っているよな〜。

 

しかし夫婦の溝は徐々に広がっていき、水俣の撮影後に二人は離婚する。夫婦の年齢差は30歳もあり、スミスは戦争による傷などで体もガタガタで、子供も作れなかったようだ。

振り返ってみれば、水俣を撮るための連帯というか、同志愛でつながっていたカップルのように思える。 まあ名前もユージン(友人)だし(^_^;)

 

映画も良かったが、いやはやこの本もすごかった。

ページをめくるのももどかしい、至福の時間を過ごすことができた。どっちも良かったなんて、珍しい。

残りの人生で、あとどれくらいこんなケースに遭遇できることやら……またしても「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の思いがよぎったのであります(←こればっかりw)