またまた満足。

映画「MINAMATA」の流れで、「苦海浄土」(石牟礼道子著)を読む。この本のことは知っていたが、読むのは初めて。

 

苦海浄土―わが水俣病』(くがいじょうど・くかいじょうど)は、水俣病患者を題材とする、1969年に出版された石牟礼道子の作品。水俣湾に排出された工業廃水に含まれた汚染物質で生じた奇病の苦しみと患者の尊厳を表現している(Wikiより)。

 

いやはや凄い本だった。重い。深い。鋭い。しかし慈愛に満ちている。

水俣病の悲惨な現実が、当地の方言による、患者や家族の話し言葉が圧倒的なリアリティで迫ってきて、ノックアウトされた。公害を生んだ近代の病理、企業の非情さなども浮き彫りにされるが、それよりも印象的だったのは、地元に暮らす漁民の生きた言葉を通して伝わってくる、広くいえば日本人の原像――といったイメージの広がりだった。

 

しかも驚いたことに、もちろん聞き書きではあるが、地元の人のセリフは、著者の創作だという。ノンフィクションとも小説ともつかない、ジャンルを超えた文学作品という意味でもユニークだ。

私が言うのもナンだが、ノーベル文学賞に値する作品だと思う。日本人が読んでも水俣弁の方言がきつい?ので、そのニュアンスが外国人に伝わるかどうかが、ちょっと疑問だが。

 

思えば、この本が出された頃、自分は大学に入って浮かれていた(?)わけで、水俣にもこの本にも触れずに来たことが、なんだか恥ずかしくなった。まあいまからでも遅くはない。全3部作をコンプリートしようっと(^_^;)