今年読んだ本で、かなり上位にランクされるのが「あの胸が岬のように遠かった」(永田和宏著)。
熱く、性急で、誠実でありたくて傷つけあった――。
「二人の人を愛してしまへり」――没後十年、歌人の妻が遺した日記と手紙300通から
夫が辿り直す、命がけの愛の物語。(Amazonより)
……というような内容。
その夫婦の恋愛の経緯を、残された日記や手紙から再構成している。
タイトルは、「あの胸が岬のように遠かった。畜生! いつまでおれの少年」という永田の歌から採っている。
20前後の青年の煩悶とか苛立ちがよく伝わってくる。
いい歌だとは思うのだが、個人的にはちょっと納得しかねるところがある。
それというのも、私の田舎は瀬戸内の海沿いで、ちょっとした観光地の岬があった。地元の人が、なにかというと気軽に訪れるところで、私など、よく自転車でひょいと行ったものだ。
だから、「岬のように遠い」という比喩が、あまりピンと来ないのである。
まあ、「あの胸」は、宇宙の果てくらい遠かったけどね(^_^;)
ちなみに、この時期の河野裕子の代表歌ともいえるのが、
「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうにわたしを攫つて行つては呉れぬか」。
この強気、迷いのなさ。あんたは与謝野晶子か!?
いやあ、この年頃は女のほうが精神的に成熟してるなあ、と感心した。
ともかく一気呵成に読んだ、面白い本でありました。