誤訳

NHKドナルド・キーン氏のドキュメンタリー・ドラマを
放映していた。日本文学を世界に紹介してくれた貢献度は
相当なものだ。
キーン氏に扮した川平慈英は好演だったが、いきなり
「いいんです!」と言い出すような気がして、ヒヤヒヤした。
番組のなかで太宰治の作品を英訳したものが出てきて、
「No Longer Human」とあったので、なにかと思ったら
人間失格」だと思い当たった。なるほどね……(^_^;)。


それにしても、外国人がよくもこれだけ日本語と日本文学に
精通できるものだ。
これはサイデンステッカー氏だったと思うが、「伊豆の踊子」の
英訳本に誤訳があるという話を、ある本で読んだことがある。


原文:「はしけはひどく揺れた。踊り子はやはり唇をきっと
閉じたまま一方を見つめていた。私が縄梯子に捉まろうとして
振り返った時,さよならを言おうとしたが,それも止して,
もういっぺんただうなずいて見せた」(「伊豆の踊子」)


ここで、「さよならを言おうとしたが……」は、踊り子の
所作であるわけだが、英訳では主語が「私」になっているらしい。
サイデンステッカー氏ほどの人でもこういうミスを犯すのだから、
日本語はつくづく難しいと思う。
逆もまた真なり。
だからワタシも、英語に深入りする気には
ならないんだよなあ……なんつって(^_^;)