『コーネル・ウールリッチの生涯』を

読んだ。上下2巻、読み応えたっぷりの大冊。
叙情あふれる文章と強烈なサスペンス。
ウールリッチは昔から好きな作家だが、その人となりは
よく知らなかった。


本書によると、人付き合いが嫌いな変人で同性愛者であり、
母親と一緒にずっとホテル暮らしをしていたとか。
多作だったので、つい昔の作品をちょこっと
変えて出版社に売ろうとしたことも多かったらしい。
ヒチコックの『裏窓』、トリュフォーの『黒衣の花嫁』など、
じつに多くの作品が映画化されているのに、
監督に会うことが一度もなかったというのは、ちょっと驚きだ。


彼の作品に熱中していたころ、ずいぶん映画的な設定だなと
思ったものだが、ウールリッチ自身映画が好きで、
そこからの影響ということらしい。
個人的には、「なぜかいたはずの人が突然消えた」、
「何時までに死刑を免れるために犯人を見つける」、
「自分のそばにいるこの人は殺人犯ではないか」といった
強烈なサスペンス劇のパターンは、ウールリッチが完成させた
のではないかと思う。
この本の特徴として、おそらく全作品(!)のあらすじと
評価分析が載っているが、それを読んでいると、また
本編を読みたくなってくるから困ったもんだ。