時代劇リターンズ

遅まきながら「たそがれ清兵衛」(DVD)を見る。
山田洋次の、新しい金字塔というべきか。
リアリティあふれる生活描写、きめ細かいディテール、
セットや小道具の美しさ、俳優の充実した演技、迫力ある殺陣。
すべてが高水準にまとまっている。
昔、白井佳夫は「木枯らし紋次郎」を「股旅ヌーベルバーグ」と
呼んだが、これこそ時代劇の新しい可能性を示す作品ではないか。
山田洋次が、これほどチャンバラ演出が巧いとは、まったく
意外で驚いた。
時代劇というと、すぐチャンバラを派手に見せることを考えるが、
この作品ではそういうシーンは2つしかない。
あくまでドラマの進行に伴って、その必然として起きるわけで、
ゆえに迫力がある。
思えば座頭市だって、第一作は確か2回くらいしか、仕込み杖を
抜かなかったはずである。
まあ、後年の座頭市子連れ狼のような、斬って斬って斬りまくる
チャンバラ映画も好きだけど。


日本映画には、チャンバラがあることを再確認できた。
世界に打って出るには、やはりこのジャンルしかあるまい。