講演会

「貧困大国アメリカ」シリーズで知られる堤未果氏の講演会に
行ってきた。
内容は本に書かれたことが中心だが、ナマ堤氏の言葉で聴くと、
経済徴兵制やらプライバシーの崩壊やら、海の向こうの他人事とは
思えない。
とくに、学校の個人情報が軍に提供されるようになって、
徴兵が巧妙にシステム化されている話は印象的だった。
軍のリクルーターが生徒にアプローチしてくるあたりの話は
リアルで怖いくらいだ。


軍のジープに乗って迎えに来た、カッコいいリクルーターは、
真っ先に「君の夢はなんだい?」と訊ねる。
これはマニュアルで決まっている言葉で、家も貧しく、
大学へ行けそうもなく、話し相手も少ない生徒は、
理解者に会ったような気分になって舞い上がり、
自分の夢を嬉々として話し始めるのだそうだ。
そして、それを聞いたリクルーターは、その夢を実現するいい方法が
ある、とおもむろに軍への入隊を勧める。
いまならキャンペーン期間中(^^;)で、いろいろな特典がある、と。
その特典というのも、あとでじつはほとんど嘘に近いものと
分かるのだが、徴兵がいわばよくできた詐欺行為に
近いものである、ということに慄然とする。
ちなみに、そのリクルーターも前線に行くのを避けるために
軍隊内で応募した兵士であり、すごい競争率だという。
ひと月17人リクルートしないと、また前線へ行かされるという、
これまた苛酷なノルマに縛られているのだそうだ。
これも、すべては9.11以後に出来た愛国者法のせいであり、
いったんこういう法律ができてしまうと、全ては戦争遂行のために
収束していき、ある種の企業にとっては戦争が利益を生むために、
さらに戦争が自己目的化するという悪循環が生まれていく……という
話である。
あらためて、アメリカの新自由主義なんぞに追随していくことの
愚かさを再認識した。


残念なのは、会場に来ていた人が、中高年世代ばかりで、若い人は
ほとんどいなかったことだ。この話は、戦争に駆り出される
20~30代の人達こそ聴くべきではないか。
……まあ自分も、その年頃にはあまりモノを考えてなかったけど(^^;)。