東電OL殺人事件

かの東電OL殺人事件、別人のDNAが検出されたそうな。
なにをいまさら……という感じである。
この事件を追及した「東電OL殺人事件」(佐野眞一)は、
抜群に面白いノンフィクションだったが、
もっとも印象的だったのは、著者が犯人とされたネパール人の
足取りを検証し、「犯行は不可能」と断定するくだりである。


ネパール人が働いていた幕張のレストランから、犯行のあった
円山町のアパートまで何度も自分の足で行ってみるのだが、
検察側の主張する犯行時刻には、絶対に間に合わないのだ。
これにはすごい説得力があった。
これだけでも、ネパール人が無実だと誰しも思うのだが、
なぜかそのことは裁判で言及されず、彼は有罪とされてしまう。
裁判長の資質にも問題があったらしいが、裁判というものの
いい加減さに、ゾッとしたものだ。
菅谷さんの事件といい、 厚労省村木厚子さんの事件といい、
冤罪もいいかげんにしろよな、と言いたい。


ただひとつあの本で気になったのは、プライバシーの問題だ。
被害者の実名をさらしたゆえに、家族はどこかに引っ越して
しまったらしい。
真実を追求するのに、実名は不可欠という佐野眞一の言い分も
分かるが、娘をなくした上に世間の目にさらされた家族の苦しみを
想像すると、あれは誤りだったのでは……といまも思う。
ちなみに私には、とてもあんな本は書けない。なぜなら、
渋谷なんて行きたくないから(^^;)。