親日映画

DVDで「海角七号/君想う、国境の南」を見る。08年の台湾映画。
世界でいちばん日本を好いてくれる国は台湾――というのは、
いまや定説だろう。去年の震災時には、台湾からは200億という
最も多い募金が寄せられたし、「いちばん好きな国は?」という
調査では日本がダントツの一位で、自国・台湾はそれより
下だったという。自分の国より日本が好きって、どんだけ?……と
なにやら申し訳ないような気持ちになってしまうが、「海角七号」は
まさにそんな台湾人の心象がしみてくるような映画である。
小さな海辺の町で行われるコンサート開催のため奔走する
日本人女性と、前座で演奏する台湾青年のラブストーリー。
それに終戦時、生き別れとなった日台のカップルの話が挿入される。
ツンデレな日本人女性は、まさに台湾にとっての戦後の日本の
象徴であろうか。最後は別れが迫るのだが、主人公の台湾青年は、
「ここに残ってくれ。ダメなら自分が日本についていく」と言い切る。
それは、戦後ずっと台湾に冷たかった日本に対する、
熱く切ないラブコールのようだ。
これほど日本を好きだと思ってくれる……台湾の人々の心情を思うと、
つい胸が熱くなってしまった。
反日映画は多いが、これは珍しい親日映画である。


ところで、劇中橋幸夫の「恋をするなら」が、現地の歌手によって
歌われる。歌詞はもちろん中国語だが、メロディはまったくそのまんま。
クレジットにも、作曲・吉田正の名前はないので、まあいわゆる
ひとつのパクリというヤツであろう。
しかしまあ、そんなことは小さい小さい。こんなに日本を好いて
くれるんだもの……と納得した、ちょっと珍しい映画体験ではあった。