おいしい本

「野蛮な読書」(平松洋子)は、久々に読み応えのある読書エッセイだった。
食のエッセイストとして知られている人だが、なかなかの読書家である
ことが分かってビックリ。
獅子文六とか宇野鴻一郎とか、あまり読んだことのない作家も
取り上げているのだが、その鮮やかな包丁の手さばきと味付けぶりに、
紹介された本を全部読んでしまいたくなった。
描写が皮膚感覚で迫ってくるところも上手い。
京都の本屋で聴いたプレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」を、
「耳の繊毛をなでまわすとろとろの甘い歌声」と言うあたりなど、
ぞくぞくしてしまった。


ちなみに平松サンは西荻在住で、毎日1時間は散歩するという話が出てくる。
もちろんぼかして書いてあるので、どういうコースなのかはよく
分からないが、それをあれこれ推理するのが、同じ西荻住民たる
私としては、一番の読みどころだった(^^;)。