夏八木勲

希望の国」で書き忘れたが、主演の夏八木勲
素晴らしかった。原発事故(=国家)に翻弄される
個人の哀しみと怒りを言葉少なに体現していて、
久々に“日本の男”を見た、と思った。
彼のキャリアのなかでも、ベストアクトではない
だろうか。園子温監督は、満島ひかりとか安藤サクラとか
でんでんとか、役者の良さを引き出すのがうまいようだ。
ちょっとタランティーノを連想した。
この演技なら、去年の主演男優賞を総なめにしても
いいくらいだと思ったのだが、それはムリだとすぐに
思い当たった。なにしろあの悪評高い日本アカデミー賞
中継している日本テレビは、まるで東電の社内報のごとく
原発の再稼働をバカの一つ覚えのように繰り返している
読売新聞のお仲間だ。選ばれるわけがない。
まあそんなことを思わせるだけでも、日本アカデミー賞
(だいたい名前が恥ずかしい)のダメダメさ加減が、
わかるというものだが。


ちなみに奥さん役の大谷直子は、認知症が進行していて、
やたら「帰ろうよ〜」を繰り返す。このセリフは映画の
基調低音のように繰り返されてずっしり重いのだが、
そんな年になった大谷直子も、かつてはNHK朝ドラ
(『信子とおばあちゃん』)の初々しいヒロインだった
ことが思い出され、お互い年をとったなあ〜……と、
しみじみ感慨にふけったのでありました(^_^;)。