円熟

CD「あなたと共に生きてゆく 〜由紀さおり テレサ・テンを歌う〜 」を聴く。
文字通り、由紀さおりテレサ・テンのヒット曲をカバーしたニューアルバムだ。


ヒットした前作の「1969」は、歌謡曲にも由紀さおりにも、
こんな鉱脈があったのか!とビックリさせられたアルバムだったが、今回もその延長線上にある作品だ。
時の流れに身をまかせ」、「つぐない」、「愛人」など、由紀さおりは円熟の歌唱力で、歌謡曲としての素晴らしさを満喫させてくれる。
そこには、ちょっと語弊があるが、日本人ゆえの日本語の解釈への信頼、といったものがあるように思う。
安心して聴ける、という感じなのだ。
テレサ・テンの歌も日本語ももちろん素晴らしいのだが、この堂々たる歌いっぷりの前では、やはりネイティブでない人の日本語の歌には、どこか疑問を感じてしまうのだ。


これはつまり、逆もまた真なりで、このアルバムの弱点もまたそこにある。
最後の「つぐない」は中国語バージョンなのだが、これだけ違和感があるのだ。やはり、一生懸命中国語の発音をなぞりながら歌っている、というふうに思えてしまう。
この曲は不要だったのではないか。
しかしまあ、やっぱり歌謡曲はいいな……と再認識したアルバムでありました。