含羞?
全盛時代の売れっ子ぶりはよく知っていたので、面白く読んだ。
しかし活躍の割にはあまり表に出ることがなく、どんな人だったかも知られていない。近田春夫は、これを「東京人の含羞」ゆえ、としている。なにしろ初等部から大学まで青山学院で、遊ぶのは渋谷。新宿は嫌いだったというから、それも納得だ。
私は東京人ではないが、含羞に関しては自信がある。
サイン会がいやだからベストセラー作家にはなりたくないし、100万円入った財布を拾ったら、交番に届けて名前も告げずに風のように立ち去ることだろう(一部フィクションw)。
「日本一の含羞男」というコンテストがあれば、かなり上位に入れる――とひそかに思っている。
それにしても筒美京平、本名が「渡辺栄吉」とは。そりゃ含羞どころじゃないよな……と、同情したくなった。
曲の元ネタをいくつかバラしているのも面白い。
「センチメンタル・ジャーニー」(松本伊代)は「アローン・アゲイン」(ギルバート・オサリバン)。
「ギンギラギンにさりげなく」(近藤真彦)は「愛のコリーダ」。
「くれないホテル」(西田佐知子)は「ラスト・ワルツ」(エンゲルベルト・フンパーディンク)。
「マドモアゼル・ブルース」(ジャガーズ)は「今日の誓い」(ビートルズ)。
よくこんなところからネタを拾ってくると感心するが、それに気づいた近田春夫もすごい(^_^;)
「曲調が一人の人間だとは思えないぐらい多彩だからすごいよね」と近田は言う。
これに関しては、あるルートから聞いたのだが、曲を大勢の下請けに作らせていた、という話がある。
もちろん印税は筒美に入るわけだが、出来高払いという形で、けっこうな額を払っていたとか。黄金時代の超多作ぶりを思い返すと、そんなシステムもうなずけるのだ。若い才能をうまく使うという意味では、頭がいいなと感心した。
まあそんな話も、ツツミかくさず明かしてほしかったなあ……なんつって(^_^;)