そのうちなんとか

植木等伝・わかっちゃいるけど、やめられない!」(戸井十月)を読む。
わが団塊世代のイコンにしてスーパースターであった
植木等の人となりを描いて、なかなか面白かった。
いろいろ苦労もしたのに、そういうことを見せないダンディズム。
人から相談は受けるのに、相談はしないストイックさ。
真面目そうに喋っているのに、そのうちどどっと襲ってくる爆笑の
話術は、「お呼びでない」ギャグそのままだったらしい。


いちばん印象的だったのは、付き人の小松政夫に関するエピソードだ。
そろそろ独立させてやろうと、小松の運転する車のなかで告げる植木。
「明日から俺の所に来なくていい。ギャラもマネージャーも
全部決めておいたから」と。
そこまでしてくれるのか、と車を止めて泣く小松。
ややあっていう、植木のセリフがいい。
「別に急がないけど、そろそろ行くか」。


持ち歌「だまって俺についてこい」の一節、「そのうちなんとか
なるだろう」は、いまも通用する人生訓(?)であり、「もったいない」
「しょうがない」などと並ぶ、日本的名言ではないか。
これで、どれだけ多くの人が救われたことだろう。


言われてそうかと気づいたのは、「クレージー・キャッツはまだ
解散してない」ということだ。
まあメンバーが次々に亡くなっているだけであり、それを言ったら
ワイルドワンズだってヴィレッジシンガーズだって
解散してないわけだが(^^;)