芳醇

「近代秀歌」(永田和宏著・岩波新書)を読む。
明治以降の秀歌100首を集めたものだが、最も多くランクインし、
そして印象的なのが与謝野晶子石川啄木だ。
「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」、
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」などに
代表される、与謝野晶子の当たるを幸いな肉食ぶり。
「はたらけど はたらけど猶わが生活千楽にならざり ぢっと手を見る」、
「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」などに
見られる、石川啄木のダメダメな草食ぶり。
短歌界のエバーグリーンとして、対照的ではあるが、このふたりは
やはり凄い。とくに啄木の歌など、現在の非正規雇用に苦しむ若者なら
切実に感じられることだろう。


俳句も好きなのだが、短歌の芳醇な日本語の世界は素晴らしい、と
改めて実感した。
俳諧は徘徊するように作る。短歌は啖呵を切るように作る――と、
これはいま思いついたのだが、意外と当たっているような気がする(^_^;)。