藤圭子

「流星ひとつ」(沢木耕太郎著)を読む。
いまはなき藤圭子へのインタビューを記録したノンフィクション。
インタビューは引退直前の1979年末で、ふたりのセリフだけで
進行する、異色の構成だ。


ホテルのバーで杯を重ねながら、藤圭子の心が徐々にほどけていき、
幼い頃の貧苦から父親のDVに至るまでを明らかにしていくさまは圧巻。
無口で幸薄そうな印象は当時でも異色だったが、
彼女の暗さはここにあったのか、と得心した。
その後の曲折、宇多田ヒカルのブレーク、そして自死までを知る
いま読むと、精神の変調のきざしが随所に見て取れるような気も。
テレビ番組や仕事への嫌悪もあからさまに語っており、良くも悪くも
まっすぐな人だったんだなあ……という印象だ。


読了後、YouTube藤圭子を聴きまくったのは言うまでもない。
「女のブルース」、「圭子の夢は夜ひらく」、「新宿の女」等々……
ああ懐かしい。何しろ彼女はほぼ同時代人なのだ。
彼女がブレークした1970年前後に、上京して学生生活を始めた。
新宿の喧騒、西口広場の集会、街頭デモ、学内ストライキの続いた
日々などが歌の記憶と重なって、しみじみ思い出されたのでありました。


それにしても……宇多田ヒカルのような稼げる娘を持てたことが、
心底うらやましい(^_^;)