名句マイデイ?
「孤独の俳句」(小学館新書)を読む。種田山頭火と尾崎放哉の名句を、金子兜太と又吉直樹が解説している。
山頭火は好きなので、そっちが目当てだったのだが、読んでみると放哉の句もなかなか良かった。
「つくづく淋しい我が影よ動かして見る」
「友の夏帽が新らしい海に行かうか」
「こんなよい月を一人で見て寝る」
「一本のからかさを貸してしまつた」
「足のうら洗へば白くなる」
「入れものが無い両手で受ける」
「咳をしても一人」
……等々。
「墓のうらに廻る」は、昔はじめて読んだときは、なんかシュールでユーモラスな句だなと思った。ちょっと不気味でミステリアスでもある。又吉の解説で、腑に落ちた。
曰く、「墓の裏には故人の情報が刻まれている。小豆島で死ぬことを覚悟していた放哉ならば墓や死は遠いものではなかっただろう。突然、墓の裏に廻りたいという衝動が起きたのかもしれない」。なるほどね、と頷いてしまった。
「花火があがる空の方が町だよ」は、放哉の孤独の深さがしみるようだ。
放哉自身は町から離れた場所から遠い花火を見ている。正確には花火を見物しているというよりは、花火を見物しているであろう人々が暮らす町の方角を眺めているのだ。つまりこれは、自分に向けて語っている言葉だろう。他者と隔絶した場所にいながらも、孤独になりきれない未練とかいらだち、はたまたあきらめとかが伝わってくる。
というわけで、放哉に興味が湧いたので、小豆島での最期を描いた小説「海も暮れきる」(吉村昭著)を読み始めた。こうして、読む本がどんどん増えていく……(^_^;)