英国王のスピーチ

DVD「英国王のスピーチ」を見る。主演男優賞など、アカデミー
4部門受賞の話題作。
吃音に悩む、という設定だけで映画が一本できてしまうことに感心する。
まあそれもそのはず、主人公は国王であり、しかもドイツとの戦争に
向けて、国民に確固たるメッセージを送らなければならない
立場なのだから。
国王役コリン・ファレルと、吃音矯正の専門家に扮した
J・ラッシュの演技を見ているだけで、この映画は楽しく、
価値がある。英国人らしいユーモアも楽しい。


吃音のせいで演説に失敗してきた国王に、専門家はアドバイスする。
「少し黙って間を持たせるといい。厳粛な感じが出る」と。
すると国王はこう答える。
「なら、私は史上もっとも厳粛な王だ」


映画のクライマックス、戦争による苦難を、ともに乗り越えて
いこうという国王の演説を、多くの国民がじっと聴き入る。
大地に水が染みこむように。やはりこういう極限状況にあっては、
上から降りてくる“神の声”を、人間は必要としているのだろうか。
日本人の場合はどうなのか……などと、マジメに考えてしまった。


サラウンドヘッドフォンで聴いていると、国王の吃音で
喉のもどかしく鳴る音がけっこうなリアリティで迫ってきて、
「だ、大丈夫か!?」とハラハラさせられる。音響設計が
しっかりしている感じだ。
吃音というのが、映画的には見る人を引き込む、いわばスリルの
作用を果たしていることにも感心した。