「かぞくのくに」

DVDで「かぞくのくに」(ヤン ヨンヒ監督)を見る。
25年ぶりに病気治療のために北朝鮮から帰ってきた兄を
巡る、家族の物語だ。
民族、国籍、政治に翻弄される怒りと悲しみ。
すべてを諦めて北朝鮮で生きるしかない兄の表情が
印象的だった。
それにしても、ヒロイン役の安藤サクラは凄い。
父親(奥田瑛二)にはあまり感心したことがないが、
娘はすでに親を超えた感じだ。


続いて、映画のあとに出版された「兄 かぞくのくに」
(ヤン ヨンヒ)も読んでみた。映画では省かれていた
ディテールが豊富で、物語の背景をより深く理解できる。
ふだんは顔の見えない北朝鮮の大衆のリアルな姿が
ここから窺えて、ある意味、映画以上に面白かった。
しかし、面白いと言ってしまうと、語弊がある。
ここに描かれたのは、歴史や国家に翻弄され、
引き裂かれた家族の物語であり、いまだに進行中の事実で
あるからだ。
暴発寸前の国にあって、ヒロインの兄たちの運命は
一体どうなるのか……? 会話の大阪弁がユーモラスな
だけに、いっそうやりきれない悲劇性が際立つ。


ヤン ヨンヒのこれまでの監督作品「ディア・ピョンヤン」、
「愛しきソナ」も是非見たくなってきた。